東京暮色 サセレシア(昭和32年度松竹作品より)
「早春」で主人公(池部良)が病気の友人(増田順司)を見舞って慰めるシーンのために作られた曲ですが、このような深刻な場面に小津さんは「サセパリ」とか「バレンシア」のような曲を注文され、かえって病人の哀れさが浮き彫りになって大変成功しました。
曲名は小津さんがつけられたもので、「東京暮色」では全篇のテーマ音楽として、又「彼岸花」ではレコードから流れてくるような扱いで使われております。
このように気に入った曲をいろいろな作品で用いるということは小津監督の一面をよく表わしており、興味のあることといえましょう。
(解説:斎藤高順)